カテゴリ:創作・悪魔番外編「カトレア」( 5 )

*前記事のレス終了してます。m(__)m


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7月12日の彼のお誕生日から早2ヶ月 4ヶ月経ちまして、すっかり 初冬になってしまいました。
その日にUPする予定でしたが、遅れ遅れてなんとか完成しました。

もちろん初挑戦のあの文字はほとんど進化しておりませんm(__)m
それを放置し続けてこんなに時が経ってしまいました(笑)。

「悪魔番外編」とでもいいますか。

このミニミニ創作の構想はソウルで悪魔を見たときにふと湧いたものです。
なんせあのジュヨンの一言がショッキングでね・・・
そんなことから書いてみました。
あ!凄惨なシーンなぞ、まったくありませんのでご心配なくね。
最後は「(笑)」で終わってますからね。

では・・・読んでみたい方はこちらから
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by juno0712 | 2011-11-19 15:50 | 創作・悪魔番外編「カトレア」
スヒョンのオフィステル。


予定よりも二時間もずれこんでやっと仕事から解放された時、もう八時をまわっていた。
大きくため息をついて俺はカシミヤのコートを脱ぐとソファの背もたれに無造作に置いた。
これからシャワーを浴びて・・・とにかく急がなくては。
ジュヨンとの約束にだいぶ遅れてしまっている。
仕事の性質上、仕方ないのはわかっているが真夜中にならなくてほんとによかった。
急いでシャワーを浴びると、下着姿のままで窓の前に立った。

この部屋は全面窓からソウルの夜景がよく見える。
この部屋を決めた時、気に入ったのはここが高層階で、夜になると街のあかりが怖ろしく美しいことだった。
それでも、ジュヨンと知り合う前までは俺は毎日一人でここで夜を過ごし、寝て、翌朝また仕事に出かけ・・・
家にいる時は一言も言葉を発することもない色の無いような毎日だった。
この部屋は俺を孤独にさせた。
だから俺は、仕事が終われば同僚と酒を飲んだり、ジムに行ったり、考えてみればこの部屋でそう長い時間をすごすことはなかったように思う。
仕事の重責のせいでひどく疲れて帰宅することが多い毎日だが、それでも今はあの頃とはまるで違う。
ジュヨンと知り合ってからは。

彼女との逢瀬はいつも何度愛しても物足りなく思えて、駅まで送ったものの、ジュヨンと離れがたくて別れ際に彼女をきつく抱きしめた。

「オッパ…苦しい…」

と彼女がコホコホとむせながら言い、俺たちは笑い合う。
そしてお互いに無言で見つめ合って長い長いキスをする。
振り返りながら手を振る彼女が小さくなって行くのを見ながら、多分ジュヨンが考えてる以上に俺はいつも無性に切なくなった。
つきあってる彼女との別れ際、こんな切ない想いを抱くっていう久々な感情に俺は自分に問いかける。

(スヒョン、お前、ジュヨンに相当溺れてるな?)
(彼女の顏か?心根にか?それとも…?)

ベッドサイドに飾られた銀製の写真立ての中のジュヨンの幸せそうな笑顔。
先日結婚式のドレスをあれこれと試着しながら、恥ずかしそうに俺の目の前に立った時の彼女を写したものだ。
その時の彼女は本当に輝いていた。
着せ替え人形の様にいったい何着のドレスを着替えたのか、辟易としている俺にかわいく頬を膨らませて
アルバムにはどんなポーズで撮ろうか、などと楽しそうに俺に話していたジュヨン。
少女の様に無垢な精神を持ち合わせている彼女の、美しいウエディングドレス姿…
それを見つめながら眠りに落ちる日々もあとわずかだ。
結婚したら、俺の腕の中で彼女は吐息を漏らし、やがて穏やかに眠りにつく…
静かに寝息を立てる彼女のまぶたにそっとキスをして、俺は彼女をもう一度抱き寄せる…
それを想像するだけで仕事に向かう時など、ふと笑みがこぼれてしまう俺に苦笑してばかりいる。

俺たちが結婚を決めた時に、ジュヨンの父親が言った。

「お前達は二人で新居を早くみつけた方がいいぞ」

俺には義父のその気遣いが本心とは真逆なことがよくわかっていた。
そしてジュヨンも、妹のセヨンがいるにせよ、男手一つでずっと娘二人を育ててくれた父親と離れがたく思っていることも痛いほど感じていた。

俺はジュヨンにも義父にも結婚したらこの家で一緒に暮らしたいと提案した。
義父のそのときのうれしそうな顔。
俺に対しての少しの申し訳なさとかわいい娘とずっと一緒に住むことになったうれしさを顔中にあらわして義父は俺に礼を言った。
今度は俺が息子になって親孝行できる、という人並みの満足感か…?
いや、何よりもチュヨンの気持ちを優先したかったのだ。
不規則な俺の仕事からジュヨンが寂しい思いをしないように。
優しいジュヨンが今までどおり義父の面倒を俺に遠慮することなく心置きなくみれるように。
業務上の細かい内容はジュヨンにも一切話すことができなかったが、何時ごろに終わりそうなのかだけを俺に聞くとそれに文句も言わずにつきあってくれた彼女に対しての申し訳なさ。
毎年の彼女の誕生日は俺の仕事のせいでいつもさみしい思いをさせているのに、文句ひとつ言わない彼女。
結婚してさらに寂しい思いを抱かせることだけは絶対彼女にはさせるわけには行かなかったのだ。

敬虔なクリスチャンでありながら重犯罪の捜査にずっと携わってきた義父は早くに妻を亡くし、
二人の娘を苦労しながら育ててきた。
関わってきたすべての事件が陰惨であったからこそ、義父は二人の娘と紡ぐ日常のささやかな毎日に感謝を捧げ、二人の娘には仕事上の負のオーラを一つも感じさせることなく、実直な暮らしをするように努力してきた。
俺の仕事だってリスクは常につきまとう。
しかし、俺は何があっても死なないことに決めた。
変な言い方だが、死んではならない、と肝に銘じたのだ。ジュヨンのために。
それが俺の仕事にマイナスに影響するとは思っていない。
むしろ、以前よりもずっと細心に慎重に仕事をこなすようになったと思う。


「オッパ。今日は遅くなりそうね?今日は教会のシスターのお手伝いが早く終わったから蘭の水遣りはすませました。寒いから今日は暖かい鍋にします。仕事が終わったらすぐにうちに来てね」
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テーブルのそのメモを見ながら俺はふと微笑んだ。
いや、他人が見たらきっとにやけていたに違いない。
かわいい小熊のイラストのある子供じみたそのメモさえも俺を和ませてくれる。

窓際にはカトレアの花が置いてあった。
俺たちの婚約式のお祝いに、チュヨンの隣家のやもめ暮らしの爺さんが趣味の蘭の花を
何鉢も彼女の実家に持ってきてくれたのだ。
りっぱな胡蝶蘭から今ではそうみかけなくなったカトレアまで。
彼女の家の居間を占領しかねないその量に、ジュヨンが2鉢を俺の家に持ち込んだ。
蘭の花の世話など俺にはできないから、とジュヨンに言ったら
そっと俺に耳打ちしながら彼女はこう言ったのだ。

「わかってる。オッパ。だから私が毎日オッパの家に蘭のお世話に行くから」
「毎日ね。いいでしょ?」

「この蘭はそんなに毎日 水遣りをする必要はないって言ってたぞ。根腐れしちまうだろう?」

ぶつぶつ言いながらも義父はしようがない、とでも言いたげに口元に微笑をうかべながら小さくため息をついた。
いたずらっぽく俺にウィンクするジュヨンがたまらなくかわいくて俺は義父とセヨンがテレビに夢中になっているのを見計らってそっと彼女に口付けをした。

そう言って彼女は時間をみつけてほとんど毎日家に来てくれた。
蘭を枯らせてはいけないから、という名目のために。
俺の帰りが深夜になるような日は彼女の手料理が冷蔵庫に入っていたり、めずらしくお互いに時間が取れれば一緒にジュヨンの実家で夕食を囲む為に俺を迎えに来てくれたり・・・
もちろん俺の部屋で過ごす時間はジュヨンの保護者のように思い切り彼女を甘えさせ、俺も子供のようにジュヨンに甘えた。
そして、恋人同士、当然の甘い濃密な時間を繰り返した。
結婚していずれ子供ができて、家族に囲まれながら、一緒にジュヨンと歳をとりながら仲良く暮らして行きたい・・・こんなささやかな幸せを夢見る俺がむしょうにおかしく思えた。

(いや、夢なんかじゃない。)
(現実なんだよな)

俺はジュヨンのメモを手にしながら呟いた。
鼻歌を歌いながらジーンズを履き、上着を手に取る。
料理上手なジュヨンの作ったものをあれこれ想像しながら俺は空腹を覚えた。
きっと今日も賑やかな食事になるはずだ。
義父は俺と焼酎を飲み交わし、居間でまた二人ともそのまま寝てしまうかもしれない。
そして夜中にジュヨンとセヨンに俺たちは叱られながら寝室に追いやられるのだ。
そんなことを想像しながら短くなったタバコを灰皿に押し付け、車のキーを手にしようとした時にサイドテーブルから車のキーが床に落ちてしまった。
腕を伸ばして床のキーを手に取ろうとした時に、ジュヨンが世話をしているカトレアが目に入ってきた。
乾燥しないようにとスプレーをしたのか、花びらには水滴がついている。

「カトレアか…」

俺は小さくつぶやくと、一生懸命この花の優美さを義父に熱く語っている隣家の老人の高揚した表情を思い出していた。
顏を近づけて腕を伸ばし、そっとその花に触れてみる。

「傷つきやすいんだよ。特にリップはな…」

その老人の言葉を思い出しながら俺は吸い寄せられるようにゆっくり片膝をついてカトレアをみつめた。



第二話はこちらから~
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by juno0712 | 2011-11-19 15:49 | 創作・悪魔番外編「カトレア」 | Comments(0)
薄いピンク色に近い大きな花弁がひだのようにうねっていた。
花の真ん中は濃く色づいて俺を誘うように正面を向いている。
まるで娼婦が大きく脚を開いて淫らに俺を挑発するように。
少しめくれた花びらの奥から蜜がとろりとしたたり落ちている。
そのエロティックなフォルム。
車のキーを拾うこともせず、俺はカトレアから目が離せなくなった。

ジュヨンの両脚を大きく開いて俺がそこに顔を埋める・・・
ジュヨンの口から漏れる喘ぎ・・・
俺の舌が何度も彼女の濡れた襞を優しくこするするたびに彼女の腰が大きくうねり、
俺は彼女の動きを両手で制して無遠慮に彼女のもっと奥に向かって舌を蠢かせる・・・

(チュヨナ・・・)

女性器を連想させるような官能的なその花の姿態をみつめながら俺は・・・猛烈に欲情した。
下半身が張り詰めて来るのがわかる。
急に喉の渇きを覚えて唾を飲み込んだときに携帯が激しくバイブしているのに気付いた。

「オッパ?戻った?」
「ああ、チュヨナ?今どこ?」
「すぐそば。マートの前にいるの。じゃあ、これから買い物終わったらすぐに迎えに行くね」
「チュヨナ!」

電話を切ろうとしてる彼女に俺はスマートフォンを持ち替えて言葉を続けた。

「何?」
「今すぐ来れるか?」
「え?」
「買い物なんていい!今すぐ来て欲しいんだ」
「オッパ・・・どうしたの?何かあった?」
「とにかくすぐに来て!」

抑えきれない欲情を俺が抱いていることを彼女が知る由もなく、
何があったのか不安げに電話を切った彼女は数分もかからないうちに俺の部屋のチャイムを押した。
ドアを開けると心配そうなジュヨンが俺をみつめて何かを言いかけた時、俺は彼女の手を取って部屋に強引に引き入れると両手で彼女の頬をなでながら唇をふさいだ。
突然の俺のこの行動を彼女が戸惑っているのがはっきりわかる。

「オッパ・・・どうしたの?」

何も言わず彼女を強く抱きしめながら、俺は彼女の言葉をまるで聞こえないかのようにもう一度キスをする。
彼女に何度もついばむようなキスを繰り返しながら、せわしなく彼女の白いコートを脱がし、セーターの中に手をもぐりこませた。
キスをしたまま、彼女の背中に手を入れてブラのホックをはずす。
生身の体でジュヨンのカラダを感じたくてほとんど同時に俺の着ているものも脱いだ。

「オッパ…」

セーターを脱がせ、キャミソールを肩からはずそうとすると、彼女の体温で温められた空気がふわっと俺の鼻孔をつく。
控え目につけたコロンと彼女の体臭が混じってなんともいえない動物的な衝動が俺を駆り立てる。
それは生身の彼女をこれから抱こうとしている自分を充分に刺激する香りだった。
彼女を裸にしてソファに横たえると、胸の谷間に顏をうずめたくてどうしようもなくなる。

「チュヨナ・・」

彼女は俺をみつめているがその瞳にはまだ戸惑いと恥ずかしさが見て取れる。
あのカトレアの花を見つめた時に、彼女の花の中に自分をすっぽりと深く包まれたくてどうしようもなかった俺は自分を落ち着かせながら彼女の乳房を手で覆う。
ジュヨンの乳房は俺の手のひらで覆っても余るほどだ。
そして彼女の陥没気味の乳首を舌先で愛撫するとすぐにそれは固くしこってくる。
柔らかい乳房に俺の頬を密着させながら乳首を舌先で愛撫する。
俺の唾でテロンと光ったジュヨンの二つの乳首。
それを見つめてもう一度執拗に乳首を舐める。
彼女が吐息を漏らし始めてのけぞるように首を伸ばすと、俺は彼女のきれいな首筋に鼻先でふるふると愛撫をする。
すると彼女の吐息がいつもの喘ぎに変わってくる。

「チュヨナ…」

目をつぶったままの彼女にそっと呟くと、彼女は薄目を開けて俺を見る。
さっきの戸惑いは消えて潤んだ瞳が俺を欲している。
俺はさっきまで愛撫をしていた乳房から右手をそっと離し、その手は俺を待ち受けている彼女の真ん中にまるで導かれるようにたどり着く。
濡れた彼女のそこは俺を待ちかねた様にうごめいている。

「あぁ…んん…」

彼女の口から洩れた喘ぎを聞くと俺はたまらなくなって体を下にずらした。
密やかに咲くカトレアをこの目で見るために。
俺だけのために咲く美しいカトレアを。
ジュヨンのきれいな白い両足をゆっくりと開き、俺はその濡れた花びらをそっとめくる様に指を動かす。
とろりとした蜜が俺の指先をひどく濡らし始めるがその花びらをそっと傷つけないように彼女のもっと奥に指を這わせ始める。
真正面を向いて凛としていながらも娼婦の様に俺を誘ったカトレア。
ジュヨンはあの花よりももっと高貴で、もっと淫らだ。
何度体を合わせても、彼女はもう一度処女性を取り戻すかのように無垢になる。
そして無垢な彼女は俺の細心な舌や指の動きでいっぺんに娼婦に堕ちるのだ。

彼女は感じているのか小さく喘ぎながら時折腰を浮かす。
指を這わせながら俺はそっと彼女の花びらに唇を近づけ、柔らかな襞をこする様に舌を使う。
何度かそれを繰り返していると彼女の呼吸は不規則になり、間断なくエロティックな喘ぎが漏れる。

「あぁ…」

俺はたまらなくなって体を起こすと彼女の体をすくう様に抱き上げ、俺の体の上に乗せた。
腰を支えて俺に合わせるように少しずつ彼女の体を下していく。
俺の首の後ろに両手をまわした彼女の体は俺を受け入れるために完全に力が抜けている。
腰の後ろに俺の両手を回して彼女の体を強く自分の方に引き寄せ二人の体を更に密着させた。

(チュヨナ・・・)

ジュヨンの中に入るとその暖かさにいつも俺は涙が出そうなほど感じてしまう。
幸せ、と言うのはこういう瞬間を言うのだとジュヨンと初めて寝た日から実感するようになった。
何度か小さく腰を使いながら行ったり来たりを繰り返すとやがて彼女の中の俺がぴったりと彼女に馴染んでくるのがわかる。
ジュヨンの体が俺のこの感覚とほぼ同時に感じていることを俺に知らせてくれる。
声も出ないほど感じているのか、眉間に皺を寄せ俺にしがみついてくる。
彼女の荒い息遣い。
不規則な呼吸。
俺の体に体重を預けてしなやかな手足を俺の体に絡みつけている。
俺はジュヨンの乳房を強く揉みしだきながらジュヨンの唇を思い切り吸う。
彼女の舌と俺の舌が絡み合う淫靡な水音が耳を刺激する。
静まり返ったオフィステルに俺たちの荒い息遣いだけが聞こえる。
俺の上に乗ったジュヨンの腰を俺はゆっくり上下し始める。
彼女の体からは力がすっかり抜けているというのに、彼女自身が俺の動きに合わせているのか、まったく重みを感じない。
ジュヨンの腰をリズミカルに持ち上げては、そのまま下ろし、速度をあげて繰り返すとそれに合わせてジュヨンの喘ぎが大きくなってくる。
ジュヨンの感じている声と、俺の目の前でぷるん、ぷるんと揺れる白い乳房。
その声を聴きながら、揺れる乳房に頬を撫でつけられると、たまらない。
自分の喘ぎ声を聞きながらぴったりとジュヨンとつながって俺達の感覚は下半身の一点に集中している。
いや、全身で感じているんだろう。
今 ジュヨンの髪の毛も乳房も俺の体に触れている部分はすべて体温がそこだけ高くなっているように感じる。
終わってしまうのが勿体ないが俺にはもうそんな余裕はない。
はぁはぁと荒い息遣いのまま、俺達は昇り詰めていく。

「チュヨナ…もう…」

俺はジュヨンに合図を送る。
彼女の腰を上下させたまま彼女の唇を求めて背を伸ばすと同時にジュヨンもすぐに唇を重ねてくる。
俺の頭を抱きしめるように。
ひんやりとした広い居間の真ん中で俺達は激しく唇を貪りあいながらラストに向かって動きを加速させた。


俺達はつながったまましばらく動かないでいた。
俺はジュヨンをゆっくりとソファに横たえて、彼女の唇を柔らかく覆った。
不規則な呼吸を繰り返しながら彼女は目をつぶったままじっとしている。
俺は彼女に呼吸の仕方を思い出させるように彼女の顎をそっと上向きにすると、唇を合わせて口を開けさせた。
そのあと、彼女の唇からそっと離れて、荒い呼吸を整えようとしている腕の中の彼女を見つめ続けた。

俺はジュヨンと呼吸を合わせてみる。
ジュヨンが息を吸えば俺も吸う。
ジュヨンが小さく息を吐けば俺も吐く。
そのリズムはゆっくりと穏やかになって行く。
何度か彼女の呼吸のタイミングに合わせていくうちに、それはやがてぴたりと重なり、俺とジュヨンのリズムは一つになる。
静まり返った部屋で、穏やかな満ち引きを繰り返しながら俺はたまらなく幸せな気持ちになって行った。

彼女はゆっくりと目を開ける。
そして、目の前で自分をみつめる俺に、彼女は照れたように微笑んだ。
俺は、彼女の唇にそっと口づけて、 チュヨナ、愛してる・・・と囁いた・・・・・



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第三話はこちらから~
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by juno0712 | 2011-11-19 15:47 | 創作・悪魔番外編「カトレア」 | Comments(0)
(カトレアのクローズUP…)
(その次はそれを見つめるスヒョンのクローズUPか?)

「ふっ…」

ジウンはタバコの灰をぽんと灰皿に落とすと眉間に皺を寄せたまま苦々しそうにため息をついた。
このシーンだけ最後まで迷ってシナリオにおとしていなかったが、いずれにしても早急に決めなくてはいけない。
あれこれ細かいことを考えながら朝から何度か繰り返し読んでいたのだ。
そのテキストが取り込んであるI Padをテーブルの上において、タバコを思い切り吸ってみた。
禁煙しようか、などとビョンホンと冗談めかして言いあっていたが、どうしてもタバコを我慢できない時がある。
まさに今のこの感覚を抑えるためには彼はタバコを吸うしかなかった。
なんとなく気分が重い。
何が彼の気分を重くしているのかは自分でもよくわかっていた。
すると自分の後ろに気配を感じて、ジウンはゆっくりと振り向いた。

「監督!おはようございます」
いつもながら自分に向けるにこやかな笑顔。
短くカットされた髪も彼になじんでいて、タイトなダウンも彼を一段とシャープに見せている。
ジウンはしばらく、彼をみつめた。
ジウンに見つめられることには慣れているかのように、特に視線を返すわけでもなく、イ・ビョンホンはタバコに火を付けながら隣に座った。
エスプレッソを手にした彼は機嫌の良さそうな顔で小さく鼻歌まで歌っている。
ジウンは少し自分を勇気づけるように小さくうなづくと、ビョンホンに向かって言った。

「ピョホナ、あのシーン、カットだ」
「え?」
わけがわからずにビョンホンはジウンをみつめる。

「お前とジュヨンのシーン。オフィステルでお前が激しくジュヨンを抱くシーン、あれ無しな」
「ええっ!!」
驚くビョンホンの顔を想定内とばかりに、ジウンは言葉を続けた。

「どうも、流れ的にそのシーンがあると、そのあと続くお前とジュヨンの電話のやりとりが生きてこないんだ。くどいと言うのか」
「それにギョンチョルがジュヨンを殺すシーンのインパクトを考えても、その前は濃くしない方がいいと思う。」
「妊娠していた、って言う言葉は、ギョンチョルにもスヒョンにもある意味すごく重い言葉なんだ。」
「だからこそ、そういったシーンは排除だ。お前ならわかるだろう?」

ビョンホンはあわててジウンに反論する。

「か、か、監督!いやいやいや、じゃ、そのジュヨンとの絡みのシーンは中間部でスヒョンの回想シーンに入れるとか、とにかく一応撮ってみて、ラッシュ見てからカットするかどうか検討したらどうですか?!」
「どうせいつも最後には編集でばっさりやるんだから、全部のシーンとりあえず撮っておくべきですって!」
「お、俺が思うにそのシーンがあるとスヒョンの悲しみがより一層引き立って・・・」

ビョンホンは、心の底では必死なのだが、いかにもプロフェッショナルな意見としてジウンに述べるかのように努めて冷静さを装いながら言葉を続ける。

「あ?監督、わかりますよ。あれね?オフィステルでスヒョンがシャワー浴びたあと、パンツ一丁でソウルの夜景見ながらの前半のモノローグでしょ?あれ、無駄ですね。冗長です。実際、説明的ですよね?あれ省いちゃいましょう!」
「スヒョンが孤独だったとか、ジュヨンと出会えて幸せだとか、義父の世話をさせてやりたいとかなんとか、うん、それ全部カットしてもいいと思いますよ。尺考えても無駄無駄。悦に入った俺の演技、長すぎたら嫌味になっちゃいますよね!カットカット!」
「それでね、まずはカトレアを画面上前面に出すわけですよ。俺達二人の絡みはまず最初は遠くでボンヤリ動いてるみたいな…」
ビョンホンの必死の説得をさえぎるようにジウンが口を開いた。

「必要ないな」
「中間部に導入して、愛した彼女との回想を入れる?そんな生っちょろいブレイクはこの映画にはふさわしくないだろう。甘ったるい恋愛映画じゃないんだぞ?」
「中間部の頃のお前、まさに氷の様に冷たいデビルなんだよな?目的を果たすためにだけしか生きてない男になってるんだ。その頃は。わかってるだろう?」
「それにな、この映画の中では極力お前に関する背景は排除しておきたい」
「復讐しながら破滅していくお前を際立たせる為にもな」

淡々と冷静に、且つきっぱりと語るジウンの言葉にビョンホンは何も言えなかった。
この時点で監督は、傍がどう言おうが決めているのはビョンホンにはわかっていた。
ジウンは打ち合わせに来た衣装係に声を掛けられ、絵コンテを手にしながら熱心に話している。
ビョンホンは横目でそれを見ながらがっくりと肩を落とした。

(おいおい、勘弁してくれよ・・・)
(あのラフな原作!あのベッドシーン読んで、俺この映画に出るの決めたんだぜ?)
(そこだけが楽しみだって言っても言いすぎじゃない)
(・・・ってことは?・・・ってことは俺だけサナとの絡みなしかよ!)

さっき中途半端に消したタバコがくすぶりながらちりちりと燃えている。
その煙がビョンホンの目に染みる。
彼はいらいらしながらタバコを乱暴に灰皿に押し付けた。

(俺、この映画、何を楽しみに撮ればいいんだよ・・・)
(救いようのないストーリーの中で俺のモチベーションをキープしてくれるあのシーンがなくなる?)
(苦しい・・・苦しいよ・・・。あのギトギトした脂っぽいミンシク先輩とだけ絡むだなんて・・・)

ビョンホンは冷静に今の状況を考えようと努力した。
ジウンがそのシーンを不要だと判断した根拠、それは理解できる。
でも、今まで2つも同じ作品をやってきて、いつも一応は全部撮ってみるっていうスタイルのはずだ。
韓国バージョン?インターナショナルバージョン?そして日本バージョン!
それだけでも3パターンだ。
今回はジュヨンとの絡みありバージョン、なしバージョンを加えて5パターンくらいにしたらファンだって喜ぶはずだ。
いや、「削除されたシーン」ってことでDVDの特典映像にしたっていいじゃないか?!
ジュヨンとのシーンだって、俺がどれだけその日に照準を合わせて体調管理してきたか!
顔合わせで彼女と初めて言葉を交わした時、彼女・・・ハードなシーンに緊張してるって言ってたんだ・・・
俺はぜったい彼女をリラックスさせようってしこたまギャグを仕込んでおいたのに!
しかもかなりのハイレベルのギャグをだ!
サナの年齢にあわせてサンフンにネットで調べさせて置いたんだよ!!
イマドキの若い子に受けるネタをな!
俺のこんな努力、監督知らないくせに!!

ビョンホンは頭を両手でかきむしると自分の前方を見た。
打ち合わせで席を立ったジウンが数メートル先を歩いている。
小道具係がジウンの脇を一緒に歩きながら何種類かのスマートフォンを見せているのが見えた。

「監督!」
ビョンホンは椅子から立ち上がるとジウンの背中に向かって声をかけた。
ジウンは立ち止まってゆっくりとビョンホンの方に振り向いた。

「監督~、正直に言えばいいじゃないですか~」

ジウンは彼が何を言いたいのかわからない様な顔でビョンホンをみつめている。

「やだね。嫉妬しちゃって」
ふっと小ばかにするような言い方をしながらビョンホンは言葉を続ける。

「そんなに見たくないですか?」
「結局、俺とサナが激しく絡んでるシーン、撮りたくなかったんですよね?

なげやりな態度でジウンにぶつけるビョンホンの言葉をじっと聞いていたが、ジウンはにやりと笑うとこう答えた。

「悪いか」

そういうと何事も無かった様にまた前を向いてスタッフの集まっている場所に歩いて言った。
その場に取り残された様にビョンホンは何も言えずに立ちすくんでいた。

「ビョンホンさん!シーン8の準備お願いします!容疑者1のアパートのシーンです!」

助監督がビョンホンに声を掛けた。
ビョンホンは無表情のまま目の前のエスプレッソの紙コップをぎゅっと握りつぶした。

その後の撮影で、容疑者1に繰り出されるパンチや蹴りがリハーサルの何倍もの迫力に感じて
まわりのスタッフは皆、イ・ビョンホンがこの映画にかける強烈なパッションを感じ取っていた。
まさか彼の心の中が単なるヤケクソだったなんてことは・・・・ジウンしか知らない。(笑)




*完読感謝!はこちらから~
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by juno0712 | 2011-11-19 15:46 | 創作・悪魔番外編「カトレア」 | Comments(4)
完読感謝いたします。

私の書きたかったのはほんのラストだったんですけど、それに至るまでがだらだら長くて、
これ、何が言いたい?!なんて読みながら思った方多かったのでは?(笑)

ビョンホンには、「あの冒頭カットカット!」なんて必死に言わせてしまいましたが、
そう。結局ジウンさん、撮りたくなかったのよね。ビョンの濡れ場ね。ははは・・・

あ!そうそう、クムスン見てたら23歳のクムスンが30歳のジェヒに対して「アジョシ~」って呼んでましたからもしかしたら「オッパ」じゃなくて「アジョシ」って呼ぶのが自然なのかもしれない・・・(笑)

最後まで読んでいただきありがとうね~♪

お礼に・・・

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by juno0712 | 2011-11-19 15:45 | 創作・悪魔番外編「カトレア」 | Comments(21)

日々の徒然にも脱力目線であれこれと。そしてびょんほん♪


by juno0712