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桜の季節に② 

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長いキスのあと、僕はそっと彼女を自分から離すと
片手をハンドルに置いて彼女の頬からあごを右手でゆっくりとなぞった。

信号は青なのに渋滞は解消しなかった。

まるで自分たち二人の時間を神が用意してくれたかのように
車の中で僕は彼女をみつめた。

ようやく流れはじめた車列にはっとしてハンドルをにぎると
僕は彼女につぶやいた。

「そばにいて」

自分につぶやいたかのようなその一言は彼女に聞こえなかったようだった。

「え?」

進行方向をみつめる僕に痛いほど感じる彼女の視線。

「僕のそばにいてほしい」

「僕がどんなに迷っても何をしてもいつも僕から離れないでほしいんだ」

「室長・・・」

僕はやっとそう言うと一瞬である決意をして彼女を見た。

濁りのない黒目がちの瞳の中に自分がうつっている。

僕のひとりよがりの感情をまるで母親のように

「あなたが心を開いてくれて嬉しい」

そんなことを言いたげな瞳で少しほほ笑んでいた。

この時の僕の衝動が妖艶な夜桜のせいなのか
それとも色めきたったこの季節特有の感覚だったのか

自分にとっては不慣れな感情にもかかわらず
押さえることができなかった。

ソウルの街のあるホテルに着くと
僕は助手席の彼女の手を取り、ヨンスさんをみつめた。

瞳の奥の一瞬の躊躇。
見て見ぬ振りをして、僕は彼女の手を強く握りながら足早にフロントに向かって歩いた。

フロントでチェックインをしている間も僕のすぐ後ろにいる彼女が
今、、この状況をどう感じているのか怖かった。

怖いけれど引き返したくなかった。

11階のその部屋の前に着くと 僕ははじめて後ろを振り向いて彼女を見た。

じっとみつめるヨンスさんの表情の中にとまどいや後悔や軽蔑が もし 少しでも
現れていたら自分はいったいどんな気持ちになったんだろう。

彼女は見事なほど静かな落ち着いた表情をしていた。

母親を独り占めしたいために駄々をこねる子供のような僕に。

僕は彼女のその穏やかな顔つきに助けられてドアを開けると部屋に誘った。

部屋をすすむとダブルベッドがすぐ視界に入ってきた。

「ヨンスさん」

僕は彼女の両肩に自分の手をそっと乗せながら彼女を見た。

(僕がどんなに迷っても)
(何をしても)
(いつも僕から離れないでほしいんだ)

さっき車の中で伝えた僕の言葉を心の中でつぶやいていると
彼女はそれをわかっているかのように言った。

「室長・・・。私はいつも室長のそばにいます。」

彼女の言葉が僕の怖れやとまどいをいっぺんに拭い去ると

ベッド脇に立ったまま僕は彼女を思い切り抱きしめた。

(彼女を自分だけのものだけにしたい)

これが本当のところは一方的な感情だったとしても
今 ここで彼女を抱きたい自分の昂ぶった感情を抑えることができずに
彼女の唇を貪った。

彼女の背中に回した手に力が入り、彼女は少し反り返るような格好になった。

それでも我慢できずに何度も角度を変えては唇を重ね、強引に舌を差し入れた。
やさしくもない。穏やかでもない。陵辱するようなキス。

彼女が本当は戸惑っているのがよくわかった。

僕の舌の動きにもちろんどう応えていいのかわからずされるがままだった。

僕の舌が彼女の口の中でいやらしくうごめいても、抵抗せずにそれを受け入れた。

ただ一方的な僕の行為を必死で。

背中に回された手にもう一度力が入ると 今度は唇を離して彼女をみつめた。

上気した顔で僕をみつめる彼女の瞳。

今は僕のこの強い思いに沿うことが自分には必要なんだ・・・
そんな表情だった。

不思議な感情だった。

今までいろんな女と体を重ねてもある意味その関係においてはフィフティフィフティだった。

どうせ愛のないSEXならば お互いにあとくされのない関係が必要だった。

お互いに貪り、快楽の海にのたうちまわり そして果てるまで・・・
関係はそれで終わり。

行為のあとで部屋を出るとき、 ベッドの乱れや足元に丸められた汚れたシーツを一瞥するたびに、自分のしてきた行為になんの感情も・・・いや、実のところは抱いた女にまで嫌悪を抱いたものだ。

それなのに彼女はまるで自分の主張などは一切せずに僕がそう望むならそうしたい・・・
ある意味 それは娼婦のようでもあり、まったく反対に 聖母のようにも思えたり、この女を信じていいのか?と自分の中で葛藤した。

(本当に?)
(君は本当に僕のものになってくれるの?)

僕は彼女を両腕で抱いてベッドに横たえた。

彼女にとってはもちろん初めての経験だったはずだ。

唇はこれまでも何度か重ねてもそれ以上のことはなかった。

今 ベッドで仰向けになって僕をみつめているヨンスさんには一見とまどってる風には
見えなかった。

僕は彼女のプルオーバーを背中を抱いて脱がせると
彼女の瞳をみつめながら彼女のシャツのボタンを上からひとつひとつ
はずしていった。

白い胸をおおう彼女のブラが目の前にあらわれると僕はその胸に唇を近づけた。


by juno0712 | 2008-03-30 22:00